ランニングしても痩せない理由は?食事を減らす前に知りたい3つのポイント
走っているのに、体重が思うように落ちない。そんなとき、食事を急いで減らす前に知っておきたいことがあります。論文からは、次の3つが見えてきます。
走る量を増やしても、消費エネルギーが同じだけ増えるとは限らない(1)
1日に減らす量が大きいと、筋肉(除脂肪量)を保ちにくい可能性がある(2)
運動量に対して食べる量が足りない状態は、健康と競技力の両方に関わる(3)
あわせて、体重が落ちるときの中身も確認します(4)。公認スポーツ栄養士の佐原和真が、4本の論文をもとに順に解説します。
走る量を増やしても、消費は同じだけ増えるとは限らない
世界各地の成人の消費エネルギーを集めた、これまでで最大規模のデータを使った研究があります(1)。1日の総消費エネルギーを二重標識水法という方法で測り、活動で使うエネルギーと、基礎代謝などそれ以外で使うエネルギーの関係を調べました。
結果は、活動で増えた消費エネルギーのうち、約28%が、体の別の消費が減ることで打ち消されていたというものでした。さらに、体脂肪が多い人ほど、打ち消される割合が大きい傾向がありました。BMIが低いほうから10%の人で約30%、高いほうから10%の人で約46%です。
走った分の消費が、そのまま1日の消費に足されるとは限らない、ということです。ただし、これは観察された関係で、原因と結果はまだ確かめられていません。
1日に減らす量が大きいと、筋肉を保ちにくい

次は、エネルギー不足の大きさと筋肉の関係を調べた研究です(2)。筋トレをしながら、3週間以上エネルギー不足にした研究を集め、不足のないグループと比べました。
結果は、エネルギー不足のグループは、除脂肪量(筋肉などの量)の増え方が小さいというものでした。一方、筋力の伸びは、ほぼ同じでした。さらに分析すると、1日あたり約500kcalの不足で、除脂肪量の増加が妨げられていました。
著者らは、筋トレで減量中の除脂肪量を保ちたい人は、1日の不足を500kcal以内にとどめるとよいとまとめています。食事を一気に減らすより、減らす量を抑えたほうが、筋肉を守りやすいということです。
運動量に対して食べる量が足りない状態とは

国際オリンピック委員会(IOC)は、2023年の合意声明で、「スポーツにおける相対的エネルギー不足(REDs)」を整理しています(3)。REDsは、運動量に対して食べるエネルギーが足りない状態(低いエネルギー利用可能性)にさらされた、女性と男性のアスリートに起こりうる、健康と競技力へのよくない影響のまとまりです。
2018年の声明のあと、170本を超える研究が出ました。要旨には、新しく分かってきたこととして、炭水化物が足りない状態の役割が大きいこと、心の健康との関わり、男性での研究が増えたことが挙がっています。
要旨では、エネルギーが少ない状態の影響は、問題になる場合と、体が適応できる場合があり、個人の要因で変わると説明されています。減量で食べる量を減らすときも、運動量とのバランスを見ることが大切です。
体重が落ちるとき、筋肉も一部は落ちる
最後に、体重が落ちるときの中身を見ます。食事を減らして体重を落とした成人の筋肉の変化を、MRIで測った研究があります(4)。運動の習慣がない成人897人のデータから見積もり、減量した2つの研究で確かめました。
結果は、体重が10kg落ちたとき、筋肉は男性で約2〜2.5kg、女性で約1〜1.5kg減ると見積もられました。落ちた体重のうち、筋肉の割合は、男性で約0.2〜0.26、女性で約0.1〜0.17でした。
これは、運動をしていない人の数字です。走る量や筋トレを加えた場合は、変わる可能性があります。「減量すると筋肉が必ず落ちる」とも「落ちない」とも言い切れず、人や進め方で違うことがわかります。
食事を減らす前に、考えたい順番
ここからは、論文の結果ではなく、公認スポーツ栄養士としての見方です。
今の体重、食事の量、走る量を、1〜2週間記録する。
減らす量を先に決める。1日の不足を、大きくしすぎない。
練習の量に対して、食べる量が足りているかを見る。
疲れが抜けない、体調がすぐれない日が続くときは、減量を止めて専門家に相談する。
よくある質問
Q 毎日走れば痩せますか。
A 走る量と体重の関係は、人によって違います。研究では、活動で増えた消費エネルギーの約28%が打ち消されていました(1)。走る量だけでなく、食べる量もあわせて見てください。
Q 食べる量は、どれくらい減らしていいですか。
A 体格、練習量、目標で変わります。筋トレをしながら減量した研究のまとめでは、1日の不足が約500kcalで、除脂肪量の増加が妨げられていました(2)。大きく減らしすぎないことが、目安のひとつです。
Q 減量すると、筋肉は落ちますか。
A 運動をしていない成人の研究では、体重10kgあたり、男性で約2〜2.5kg、女性で約1〜1.5kgの筋肉が減ると見積もられました(4)。運動を加えた場合は、変わる可能性があります。
Q 減量中に、体調が悪いときはどうしますか。
A 疲れが抜けない、体調がすぐれない日が続くときは、減量を急がず、医療機関や専門家に相談してください(3)。この記事で個別の診断はできません。
Q 自分の場合は、どこまで減らして大丈夫ですか。
A 11月19日のセミナーで、減量の目安と鉄・貧血の話をあわせて解説します。
次の一歩
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参考文献
(1) Careau V, et al. Energy compensation and adiposity in humans. Curr Biol. 2021;31(20):4659-4666.e2. https://doi.org/10.1016/j.cub.2021.08.016
(2) Murphy C, Koehler K. Energy deficiency impairs resistance training gains in lean mass but not strength: a meta-analysis and meta-regression. Scand J Med Sci Sports. 2021. https://doi.org/10.1111/sms.14075
(3) Mountjoy M, et al. 2023 International Olympic Committee's (IOC) consensus statement on Relative Energy Deficiency in Sport (REDs). Br J Sports Med. 2023;57(17):1073-1097. https://doi.org/10.1136/bjsports-2023-106994
(4) Heymsfield SB, et al. Proportion of caloric restriction-induced weight loss as skeletal muscle. Obesity (Silver Spring). 2024;32(1):32-40. https://doi.org/10.1002/oby.23910