一時的な糖質制限戦略はパフォーマンスを向上させない



トレーニング期間中に一時的な糖質制限を用いる戦略はパフォーマンスを向上させないと、Kasper Degn GejlらがInternational Society of Sports Nutrition にて2021年5月に報告¹⁾しました。


“糖質制限戦略”の急性効果は認められている

マラソンやトライアスロンなどの持久系スポーツでは、糖質利用をより節約しながら走れるエコなエネルギー代謝を習得できるかがパフォーマンスに直結します。日々のトレーニングではこのような変化を得るために様々な手法が考えられています。その中の1つでトレーニング期間の一部分で糖質の利用可能性(≒グリコーゲン量)を意図的に制限する“糖質制限戦略”いわゆる「Train Low」が広まっています。


Burkeらが2018年に報告した総説²⁾ではその“糖質制限戦略”の手法を大きく4つに分けました。

  1. 「Twice-a-day」:筋グリコーゲンが枯渇するトレーニング後、糖質制限または断食で筋グリコーゲンが少ない状態を保ち2回目のトレーニングを行う。

  2. 「Sleep Low」:筋グリコーゲンが枯渇するトレーニング後、一晩糖質制限または絶食を行い、翌朝にトレーニングを行う。

  3. 「Fasted Trainig」:一晩の絶食、または6時間以上糖質を補給せずにトレーニングを行う。

  4. 「Recover Low」:グリコーゲンを枯渇させるトレーニング後、糖質制限又は絶食で回復させる。


これまでこの“糖質制限戦略”が脂肪代謝やミトコンドリア形成を促進するなどの急性効果は調査されてきました。今回、この研究では最終的なアウトカムでもあるパフォーマンスに影響をもたらすかについて、過去の研究を調査しました。


この研究はシステマティックレビュー形式で、オンラインデータベースからまず所定の検索(※1)をかけて計407件の論文を抽出。そのうち、

  • 最大酸素摂取量(VO₂max)が女性で55 ml/kg/min、男性で60 ml/kg/min以上のアスリート

  • トレーニング・介入期間が1週間以上である

  • “糖質制限戦略”を伴うトレーニングおよび/またはリカバリーを含む介入が週に3回以上ある

  • トレーニング期間前後に持久力パフォーマンス測定している

などの基準を設けてスクリーニングを行った。その結果、基準を満たした9つの研究に絞って解析されました。


パフォーマンスは変わらない

解析の結果、エリート持久系アスリートが“糖質制限戦略”を用いた場合、ランナーに必要な高糖質食と比較してパフォーマンスへの効果はないとされました (SMD = 0.17 [− 0.15, 0.49]; P = 0.29)。


著者は今回の研究結果を受けて以下のように考察をしています。

持久系アスリートは、糖質の利用可能性が少ない状態でのトレーニングに既に適応していると考えられる。
これまでの研究で用いられている介入期間(1週間から4週間)とパフォーマンステスト(2時間以下)はいずれも比較的短いため、決定的な結論を出すには時期尚早だ。

と示し、今後研究の広がりによっては結果が変わることも示唆しています。


また一方で、

トレーニング量が控えめで、特にトレーニング前や回復時に大量の糖質を摂るアスリートは、“糖質制限戦略”の利益を受ける可能性が高い。

と述べています。



論文情報

  1. Gejl, K.D. et al. J Int Soc Sports Nutr18, 37 (2021).

  2. Burke LM et al. Int J Sport Nutr Exerc Metab. 2018;28(5):451-463.


脚注


※1 検索文章: ((elite) OR (athlete*) OR (trained) OR (triathlete*) OR (cyclist*) OR (runner*)) AND ((“train low”) OR (“train-low”) OR (“sleep low”) OR (“sleep-low”) OR (“periodized nutrition”) OR (“carbohydrate availability”) OR (“CHO availability”) OR (“carbohydrate periodization”) OR (“CHO periodization”) OR (“carbohydrate manipulation”) OR (“CHO manipulation”) OR (“glycogen availability”) OR (“glycogen manipulation”) OR (“low muscle glycogen”) OR (“glycogen depletion”)) AND ((performance) OR (“time to exhaustion”) OR (“time trial*”))