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執筆者の写真Kazuma Sahara

“滝汗” の季節がやってくる!発汗の仕組みを知って、夏を乗り越えよう!



『もうすぐ、夏ですね!!』(春は終わりですね…)

ということで、ランナー足らずとも夏の時期の運動で待ち受けるのは “滝のような汗” 、通称『滝汗』

着ていたシャツが身体に貼りつく程に汗をかいた経験、皆さんも1度はありますよね?

そのような時には汗をかいたら→水分補給

これは当たり前のように行われていらっしゃると思います。

今回は【発汗の仕組みを知る】

汗は何故かくのか?→どんなシステムなのか?→どうすればよいのか?

の順に紐づけ理解し、サマースポーツの場など、汗をたくさんかくシチュエーションで活用して頂ければと思います。

 

目次

1.汗は何故かくのか?

2.汗をかくまでのシステムとその後の変化

3.汗をかく時はどうすればよいのか?

 

1.汗は何故かくのか?


A.体温上昇を抑えるため

まずはそもそも、汗は何故かくのか?

ヒトが活動をする時、体(筋肉)を動かすために体内で炭水化物・脂質からエネルギーを作り出す必要があります。

そのエネルギー(ATP*¹)は体内で「作り置き」ができないため、必要に応じて作られます。

その際、本来のエネルギー量に対して実際にはたった20%のエネルギー量しか運動(筋収縮など)に活用されないのです!!

残りの80%が熱に変換されて、体温上昇を引き起こします。

逆に捉えると、それだけ熱を作る・保つことがヒトには大切なことが推測できますね💡

ヒトは体温を一定に保つ恒温動物であるため、体温上昇をいかにコントロールする必要があります。

この体温上昇を抑える1つの方法が発汗になります。

このシステムを知ることで、様々なアクシデントの回避などにつながっていきます。

adenosine triphosphate

 

2.汗をかくまでのシステムとその後の変化

 ①皮膚の血液量の増加

実は発汗が生じる前から、身体は体温上昇を抑えるために迅速に対応を始めています!

体温を下げるためには熱を持った血液を体温よりも低い「外気」に触れさせることで、冷やそうとします。

そのために、皮膚への血液量を増やします

同じ仕組みとしては、車の前方部分にある「ラジエーター」が1つあげられますね💡

冷たい風をラジエーターに当てることで、内部を水を冷やす仕組みになっています。

また、暑い日のランニング後に顔が赤くなっている時、ございませんでしょうか?

紫外線による影響もありますが、サングラスの下も赤くなっている場合もあり、それが皮膚の血液量増加を表しています。

 ②心拍数の増加

それまで筋肉へ送っていた血液の一部が熱を逃がすに皮膚に多く向かいます。

同じ運動量(血液に含まれるエネルギーや酸素)を確保するために、心臓は拍動の回数を増加=心拍数の増加

を起こして何とかやりくりをしていきます。

 ③発汗

発汗で熱を逃すためには、「気化熱」という汗が蒸発する際の熱移動を利用しています。

この時の汗はカラッとした汗で、効果的に体温の上昇を抑えることができます。

しかし、”滝汗”のようなポタポタ流れる汗の場合は「無効発汗」という放熱作用のない汗になってしまいます

これが長引くことにより体内の水分量が低下し、体温の急上昇や脱水を引き起こしてしまいます。

 ④血液量の減少

発汗が生じると皮膚への血流貯留の拡大も相まって、心臓から筋肉へ供給される血液量もより減少していきます。

筋肉では血液から運搬されるエネルギー源や酸素が少なくなり、疲労感などの症状が出始めてきます。

 ⑤ホルモンの変化

発汗により失った水分、汗に含まれる塩分を保つために、脳の下垂体からバソプレシン(抗利尿ホルモン)が分泌され始めます。

このホルモンは腎臓で作られる尿から水分を再吸収し、血液量の保持・尿の濃縮をもたらします。

また塩分(ナトリウム(電解質))を保つために、副腎*²皮質から放出されるアルドステロンがバソプレシン同様に腎臓への再吸収を促します。

 ⑥グリコーゲン消費の増加

ここがシリアス・エリートランナーの方には大切なことになると思います💡

グリコーゲンは解糖系と呼ばれる酸素が少ない・ない状況でもエネルギーを作り出せる “使い勝手のいい” “即効性のある”エネルギー源になります。

血液量の減少=運ばれる酸素量が減少してくると、筋肉では酸素を使った燃費のいい脂肪燃焼にブレーキがかかってきます。

そのため、使い勝手のよいグリコーゲンにエネルギー産生をシフトしていきます。

グリコーゲンは体にストックしておける量が比較的少なく、グリコーゲン消費が増加することで疲労、パフォーマンスの低下につながってしまいます。

このパフォーマンスの低下は運動環境にもよりますが、体重の2~5%以上の発汗-脱水が生じると顕著になってきます。

体重の2~5%は体重60㎏の方の場合、1.2~3.0㎏の体重減少に相当します。

運動中の発汗は1時間で最大2.4Lに相当することもありますので、1時間足らずにこれらの症状が生じる危険性もあります。

*²腎臓の上部にある臓器

 

3.汗をかく時はどうすればよいのか?


A.ナトリウムなどの電解質を含むスポーツドリンクを摂取

やはり運動で汗をかくときには、スポーツドリンクで補給することが最善な方法です。

では、なぜ水などではなく、スポーツドリンクなのか???

汗にはナトリウムを始め、カリウム、カルシウム、マグネシウムなどのミネラルを含んでいます。

これらは筋肉の収縮など、様々な身体の仕組みをコントロールするための潤滑剤のようなものであり、血中などの体内で一定の量(濃度)を常に確保しておかなければなりません

もし水だけの補給の場合、汗によって損失した分のミネラルを補給できないため、血液量は回復してもミネラル濃度が薄まってしまうこともあります。

いわゆる「低ナトリウム血症」の状態に陥って、吐き気・嘔吐・頭痛など症状が起こる危険性が出てきてしまいます。

夏場のスポーツ時は特に水だけの水分補給だけにせず、

ナトリウムなどのミネラルバランスよく設計されたスポーツドリンクを小まめに摂ることで、元の血液状態に近づけることが可能になってきます!

 

以上を簡単にまとめますと、

〇体温上昇を抑えるための発汗

〇血液量の減少により酸素供給などが滞り、疲労感・エネルギー源の消費増大が生じる

〇ミネラルも含む水分補給で、元の血液状態への回復が可能に

となります。

スポーツの際の水分補給は、普段の水分補給とは少し勝手が違ってきます。

水だけの水分補給にせずしっかりとスポーツドリンクを準備し、アクシデント防止につなげ、良い結果へとつながる運動にしていきましょう(^^)!!

 

参考文献

日本臨床栄養協会 編集委員会編『New Diet Therapy』(第33巻第1号)一般社団法人 日本臨床栄養協会,(2017).

寺田 新 『スポーツ栄養学:科学の基礎から「なぜ?」にこたえる』 一般社団法人 東京大学出版会,(2017).

カッチ,ビクターほか『運動生理学大辞典:健康・スポーツ現場で役立つ理論と応用』田中喜代次他訳,西村書店,(2017).

ハッチソン,アレックス『良いトレーニング、無駄なトレーニング:科学が答える新常識』児島 修訳,草思社,(2012).

芳賀 脩光ほか『からだづくりのための栄養と運動』ナップ,(2011).

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