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【糖質摂るならポイント練習の前 or 後?】夜のポイント練習前後の糖質摂取が翌朝の血糖値変動に与える影響

スポーツ栄養の世界では、食べる内容だけでなく “タイミング” もパフォーマンスやリカバリーに大きく関わるものとされています。最も知れ渡っていることと言えば「運動直後30分の “ゴールデンタイム” 」 でしょうか。


今回は、2025年に発表された論文(1)をもとに、「夜のポイント練習前後の糖質摂取は翌朝の血糖値などのエネルギー代謝にどう影響するのか?」を深掘りしてみます。


研究の概要

この研究は持久系アスリートを対象に「夜の高強度トレーニング」の前または後に糖質を摂取した場合、翌朝にかけて、血糖コントロールを始めとするエネルギー代謝全体にどのような違いがあるのか?を調べたランダム化比較試験になります。


概要は以下の通りです。

  • 対象者:トライアスリート・サイクリスト10名(平均37.2±6.3歳(19〜45歳))

  • 持久能力:VO2max(最大酸素摂取量) 平均62.0±6.5mLO2/kg/min(鍛錬者レベル)

  • 介入試験:19:30から72%VO2maxで50分間サイクリング→80%VO2maxで25分間サイクリング相当のの距離でのタイムトライアルを実施(アップ・ダウンを含め約90分間の運動)

  • 飲料:運動前または後に平均253gの糖質を摂取(※体重1kg当たり3.2 g。これは実験的な高用量)

  • 介入の翌朝:空腹時にOGTT(経口ブドウ糖負荷試験:ブドウ糖75g)を実施し、糖・脂質の酸化状態を測定


図1.研究の全体像

研究のプロトコル
Mattsson et al. (2025). Impact of carbohydrate timing on glucose metabolism and substrate oxidation following high-intensity evening aerobic exercise in athletes. J Int Soc Sports Nutr. より引用改変

結果

・運動前の摂取で、翌朝の血糖値上昇はプラセボ(運動前後の糖質摂取なし)と変わりなかった。

・運動後の摂取で、翌朝の血糖値が60〜90分の間で有意に高くなった。また、糖の酸化が亢進した。

運動翌日の経口ブドウ糖負荷試験での血糖値変動
Mattsson et al. (2025). Impact of carbohydrate timing on glucose metabolism and substrate oxidation following high-intensity evening aerobic exercise in athletes. J Int Soc Sports Nutr. より作図

運動前に糖質を摂取すると、摂取した糖質は運動時に利用されます。運動前の摂取では運動後の摂取ほどの血糖値上昇が見られなかったのは、運動で摂取した糖を消費していた分、翌朝の糖質摂取時に一部が貯蔵に回されやすくなっていたことが理由と考えられます。

一般的には激しい運動後にはたんぱく質摂取だけでなく、糖質摂取も速やかなグリコーゲン回復のために重要重要とされています。この結果から考えると、運動後の糖質摂取が糖代謝へネガティブに働く可能性もあると考えられます。


注意点

この結果の解釈について注意すべきことは、この研究の対象者が鍛錬者(パフォーマンスレベルが高い者)であることです。ビギナーの方はエネルギー代謝の適応(安静時のエネルギー産生が脂質優位)しきれていないため、結果が異なる可能性があります。

また、1回の糖質摂取量としては高容量のため、運動後の糖質摂取量を減らした場合にも血糖値の上昇が生じるのか、考える余地があるかと思われます。



どう活かす?

◾その後の「目的」に応じて変えていく

今回の炭水化物摂取量(約250g)は現実的な量ではありません。しかし、「摂取のタイミングによって、代謝が変わる」という点は1つの考えるポイントとして良いでしょう。


◾翌日も走る場合は運動後に補給を

例えば、「夜練習+翌朝ジョグ」のような2部練やセット練習をする場合は、運動後に糖質を補給しておく方が糖の酸化が亢進されやく、走りやすさが生まれます


◾翌日が休養日やダイエット中なら、運動前でもOK

翌日がオフや軽いジョグだけなら走る前に摂る、または運動後の糖質は控えめにしてもOKでしょう

血糖値や体脂肪を意識したい方は特に、運動前に糖質を摂り、運動後は軽めのたんぱく質補給で済ますという摂り方も有効でしょう。そうすることで、翌朝に血糖値の上昇を和らげられるでしょう。



糖質も “タイミング” が鍵

今回ご紹介した研究から応用できることをまとめてみました。

シーン

おすすめの糖質摂取タイミング

翌日も強度高めの練習あり

運動「後」に補給(50〜100g目安) cf)おにぎり1個で糖質約40g

翌日は軽め or 休養日

運動「前」に摂って、後は軽め

血糖や体脂肪管理重視

食事全体での糖質量とタイミングを調整

夜にポイント練習をする時、それまでお仕事をされているのではないでしょうか?仮に運動前に糖質を摂りたくても、食事が難しいシーンもあるかと思います。そのような際はスポーツドリンクやエネルギーゼリーなど、消化吸収が早いものなら、良い胃腸状態で練習に臨めるはずです。


運動の直後に何を、どれだけ食べるか。

これは単に “リカバリー” の話ではなく、「翌日の体の準備」にも大きく関わる重要な戦略にもなるのです。



参考文献

(1)Mattsson et al. (2025). Impact of carbohydrate timing on glucose metabolism and substrate oxidation following high-intensity evening aerobic exercise in athletes. J Int Soc Sports Nutr.

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