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執筆者の写真Kazuma Sahara

市民ランナーのための “炭水化物論”

更新日:2019年2月4日

最近でもよく話題になる『炭水化物』。

ヒトにとって大事なエネルギー源でもある炭水化物ですが、今では食べ過ぎが大きな問題になっています。

一方、低炭水化物ダイエットや痩せ志向によって、逆に不足している場合よく見受けられるようにもなってきました。


炭水化物の必要性は人それぞれ異なります。

自分にはたくさん必要かもしれないが、隣の人は自分の半分以下ほどでもOKな時も。


なぜ、『あの人は、この人は。』といった違いが起こるのでしょうか?

また、様々な情報で見る炭水化物についての違いは何なのでしょうか?

様々な視点から炭水化物について解説していきたいと思います。


炭水化物の分類

まず、炭水化物はどんな種類があるのかを把握しましょう。


炭水化物は最も大きな括りとされており、その分け方のポイントとして

『シンプルにした時の種類・つながる長さ・つながり方』

が使われています。


1.単糖類


単糖類は炭水化物の中でも最もシンプルな形で存在し、グルコース・フルクトース・ガラクトースといった種類があります。

いずれも、体の中ではグルコース(=血糖)として様々な形で利用されていきます。


2.二糖類~オリゴ糖類


二糖類はグルコースやフルクトースなどの単糖が2つつながった形の糖質になります。また3~10個ほどつながったものはオリゴ糖と称されます


二糖類には砂糖の主成分のスクロール(ショ糖)や、牛乳や母乳に含まれるラクトース、またマルトースなどが主な代表例です。

オリゴ糖は果物や野菜に含まれる炭水化物で、フラクトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、難消化性デキストリンが主な代表例です。


これらはそれぞれ、

  • バラバラにてできる単糖類(組成)の違い-グルコース・フルクトース…

  • 単糖同士のつながり方-上からつながるのか・下からつながるのか…

によってスクロースやラクトースとして構成されます。


3.多糖類


多糖類は二糖類・オリゴ糖を更に長く・大きくしたもの。単糖が11~1000個がつながった大きな形をとっています。


多糖類はデンプンとして摂ることが多くを占めます。

デンプンはご飯やパン、麺類など、主食で食べる食品の炭水化物として含まれ、加熱処理をすることで消化がしやすくなり、エネルギー源として摂取できるようになります。

摂取したデンプンはヒトの消化管内で徐々に細かくされ、単糖の形で小腸から血管内へと吸収されていきます。

その後、肝臓や筋肉などの組織ではグリコーゲンとして貯蔵されるようになります。

これらをまとめると上記の図のような形になります。


チラッと文章にも書いていましたが、『糖質』とはヒトが消化・吸収できるエネルギーになるものの総称で、食物繊維以外のものを指します。

また、似たようなもので『糖類』という分類もあります。

これは二糖類や単糖類といった小さな糖質を称したものです。


脂質のように悪者扱いされがちな『糖質』ですが、摂り方をしっかりと見極められるようになれば問題なく食事を楽しめるようになります。


“製造” と “保管” をして丁寧に使い分けられる

ヒトはご飯やパン、麺類から摂取した糖質をグルコースまでバラバラに消化してから小腸で吸収します。その後、バラバラにされたグルコース(=血糖)は血液を通じて身体の様々な組織に運ばれ、そこで再度つなぎ合わせられて『グリコーゲン』という形に作り替えられます。

小腸から吸収して最初に到達する組織の『肝臓』や、全身を巡った先の『筋肉』といった組織でグリコーゲンとして作り替えられていきます。

このように作り替られたグリコーゲンはその場所で貯蔵され、それぞれ組織ごとで大切に使われていきます。


肝臓に貯蔵されたグリコーゲンは主に “血糖値の維持” のために使われ、起床時には約半分(総貯蔵容量は100~150g)になります。朝食はこれを再補充する役割を果たします。

一方、筋肉に貯蔵されたグリコーゲンは血糖値としては利用できず、“筋肉を動かすためのエネルギー” として使わます。


血液中には血糖として保管できる容量がとても少ないため、肝臓や筋肉で貯蔵する仕組みをとり、それぞれの需要に対応してエネルギー源を使い分けているのです。


エネルギー消費の内容は人それぞれ



エネルギー源となる炭水化物はグリコーゲンとして貯蔵されますが、その使い方はその人が日頃『どのような生活をしているか?』によって大きく異なってきます。


炭水化物は他のエネルギー源(主に脂質。稀にタンパク質もエネルギー源として利用される)よりも “使いやすい” エネルギー源とされています。

エネルギー源として使いやすいため、特に “大きな力が必要な動き” をする際に主に使われます。


余り力の使わないデスクワークの方であれば、炭水化物に限れば1日1000kcal程(総摂取カロリーで約2000kcal)で十分量を確保できます(*個人差はあります)。これはご飯4杯分に相当します。実際はおかずからも炭水化物を摂取するので、1食1杯でちょうどいいですね。


ランニングをする方はこれに+αで摂取する必要がでてきます。

ランニングで消費するカロリーは概算で『距離×体重』で求められ、皇居1周(約5㎞)を走れば、約300kcal前後の消費カロリーとなります。


実際はこの『走り方』によっても消費するエネルギーの内容が変化してきますが、このような運動や階段上りなどの少し疲れるような生活活動を多くした日には、炭水化物を摂取する必要性が高まってきます。


そもそも何で摂らなければいけないのか?



「脂肪がたくさんあるんだから、それを思う存分使わせればいいじゃない!」

こんな考え方もあるかと思います。


ランニングも有酸素運動なので、多くの場合は脂肪が消費エネルギーの多くを占めます。その際、脂肪をエネルギーとして利用するには炭水化物も同時にエネルギーとして燃やす必要があります。

これはランニングに限らず、ほとんど身体を動かさない動かないデスクワークなどの場合も同じです。


イメージは『脂肪がバーベキューの炭で、炭水化物は着火剤』になります。

炭は火がつけばしばらくは燃え続けられますが、最初燃やす時や途中では着火剤の勢いが必要になりますよね。

脂肪も炭水化物から供給される別のエネルギー源と一緒になることで初めて、効率的にエネルギー消費が進んでいくようになります。


この炭水化物が不足してくると脂肪の燃焼効率が下がったり、代替として『タンパク質』が利用されるようになります。

これも炭水化物の必要性に関わりますが、その背景には大きな問題も隠れているのです。


タンパク質は筋肉の材料の1つです。その筋肉は、脂肪や炭水化物をエネルギーとして燃やすための大切な『場所』でもあります。

極端なカロリー制限(1日の摂取カロリーが1000kcal台前半以下)のダイエットや、運動をほとんど行わずに小食で済ましてしまうと筋肉の量が減ってしまいます。すると、エネルギーを燃やす場所が減ってしまうため、太りやすい身体になってしまいます。

また長期的には、骨粗鬆症や階段の上り下りが難しくなるリスクもあります。


炭水化物は大切な自分を支えてくれるエネルギー源です。

身体作りのためにも、ダイエットのためにも、そして将来のためにも炭水化物の摂り方はとても大切になってきます。


その日の自分をチェックしましょう!



運動をする・しない、1日中動き回る・デスクワーク

同じ人でもその日、どのような活動をしていたかによって炭水化物の必要性は変わることをお伝えしてきました。


この時にベースとして押さえておきたいポイントは


動いたら食べる

動かなければ少し抑える


そのためにも、日頃から


『自分で自分をチェックしていく』


ことが大切です。

管理栄養士などの専門家でもリアルタイムで食事を調整することは、なかなか難しいことが多いのが現状です。


「今日は仕事でそんなに動いてないから、ラーメンは控えよう」

「明日はフルマラソンだから、しっかりと食べておこう!」

「あっ、体重が段々増えてるから、あの量だと少し食べ過ぎだったのかな?」


しっかりと、少しずつ知識と経験を身に付けて、その変化をチェックしながら “自分のスタイル” を作りあげてみて下さい!




参考文献

  • ウィリアム・マッカードルほか(2018)『スポーツ・運動栄養学大辞典-健康生活・医療に役立つ』(井川正治ほか訳)西村書店.

  • 寺田新(2017)『スポーツ栄養学-科学の基礎から「なぜ」にこたえる』東京大学出版.

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